私と彼女の一言批評
終始漂う緊迫感がえぐい!
観るなら絶対Blu-rayがおすすめ!
見やすくて面白い!!
ただちょっと怖かったな…
概要
2013年公開のアメリカSF映画
監督:アルフォンソ・キュアロン
主要キャスト:サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー
ゼロ・グラビティの魅力
- 美しくも宇宙の恐ろしさが伝わる画面の臨場感
- 静と動が完璧に計算されたストーリー展開
- 主演女優の感情がひしひしと伝わる迫真の演技
こんな人にはおすすめ!
- 宇宙にいるかのような非日常な体験を望む人
- 短い時間で満足できる映画を観たい人
- 生きることについて改めて考えたい人
あらすじ
メディカル・エンジニアであるライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)は、ベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)のサポートのもと、地球の上空60万メートルの無重力空間<ゼロ・グラビティ>で、データ通信システムの故障の原因を探っていた。これが最後のミッションとなるコワルスキーは、いつものようにヒューストンとの通信でジョークを交わし、宇宙遊泳を楽しんでいた。
その時、ヒューストンから「作業中止!至急シャトルへ戻り、地球へ帰還しろ!」という緊迫した命令が届く。破壊された人工衛星の破片(スペース・デブリ)が別の衛星に衝突して新たなデブリが発生し、彼らのいる方向へ猛烈な速さで迫っているというのだ。さらに連鎖反応で衛星が次々と破壊され、様々なシステムが壊滅し、ヒューストンとの通信も途絶えてしまう。シャトルに戻ろうとするふたりに、凶器と化したデブリが襲いかかった!
https://warnerbros.co.jp/home_entertainment/detail.php?title_id=4364/
批評
数あるSF映画の中でも、これほど観客に「息苦しい……」と思わせた映画は珍しい。
広大な宇宙のはずなのに観客には耐えかねない閉塞感が、このゼロ・グラビティにはある。
観ていると思わず呼吸をするのを忘れてしまうような感覚を無意識に与えるほどの、圧倒的な宇宙空間の怖さと美しさが表現されている。
この怖さの原因は大きく2つのもので構成されている。
それは”被写体の少なさ”と”巨大な被写体”である。
この”被写体”というのは人物や建造物、小道具や背景を指す。
ゼロ・グラビティは主要人物が非常に少ない。
場面のほとんどが宇宙空間や宇宙ステーションやシャトルで構成されている。
故にカメラが写しているのは常に”人物”と”ロケーション”の2つだけ。
そしてこの2つの要素は、対比的に描かれていることが多い。
広大な宇宙空間や惑星のたった一部を背景に、人間や人口建造物を画面にちょこんと配置することで我々人類がいかにちっぽけで矮小な存在なのかを嫌でも知らされる。
観客が共感できるものは、人類である主人公とそして建造物。
それらを常に画面上で、宇宙という過酷な環境では取るに足らない脆い存在であるかを示し、恐怖感を与えているのだ。
また太陽の描き方も不安を煽る演出に一役買っている。
太陽という光、一種の安心感を与える存在を画面に時折写すと同時に、人物や建造物に大きく深く暗い影を落としこんでいた。
この陰影の使い方は観客の感情を、より臨場的に主人公と密接に結びつける大きな要素となっているだろう。
しかし、怖いだけではただのスリラー映画。
この映画はSF映画だ。観客に未知のものへの感動を与えなくてはならない。
ゼロ・グラビティでは、我々が住むこの地球という惑星の美しさをカメラ、女優の演技、音楽、画面構成、尺をふんだんに用いて描ききっている。
画面いっぱいに地球を映し出した瞬間に私と彼女は、まさに映像に感動、心を奪われていた。
ぜひ、この臨場感と美しさはBlu-rayや4Kテレビの映像美で観ていただきたい。
ゼロ・グラビティの上映時間は驚きの91分!
この時間は子供向けのアニメーション映画とそう変わらない尺である。
故に上記で述べた画面構成的には被写体の少ない本作も、飽きずに観れる。
物語の基本である起承転結も非常に分かりやすく明確に描かれているので、洋画でよくある「今なにをしているんだ……?」という現象が起きにくい。
平日の仕事終わりや家事が終わって就寝までのちょっとした空き時間で、頭からっぽでも楽しめる作品。
本作のストーリー展開で特徴的で面白かったのは、メリハリのついた静と動の使い分けだ。
静のシーンではBGMや画面の大きな変化はないが、人物たちの心理描写やそれを映像で魅せる細かな演出が集中して観れる。
もちろんこの手法が成功しているのは主演サンドラ・ブロックの魅せる、感情をその身全てで表す迫真の演技も合わさっての事だ。
彼女の演技力、映画的手法が絶妙にマッチして、このゼロ・グラビティの魅力が発揮されている。
対して動のシーンでは、打って変わってカメラアングルが激しく動き、場面転換する。
展開も予想だにしない方向へ行き、観客の感情を驚かせる。
このメリハリのついたストーリー展開が91分という短い尺をさらに濃縮させて、満足度の高い映画へ昇華させている。
サンドラ演じる主人公ライアンは、とある過去を背負った女性である。
そんな彼女が極限状態の宇宙空間で何を思い、何を行動し、そしてその結果、何を得たか。
私はそれが「生きる決意」ではないかと感じた。
人は誰しも過去を持っている。
それは悲しい事も楽しい事も含め、すべてその人の人格を形作ってきたモノ。
ライアンには乗り越えたかった過去を本作の劇中で、向き合い、そして最後にはそれを抱えて生きる事を選んだ。
劇中であらゆる取捨選択を行い、生きるという重みに気づき、その重みを彼女は心の底から喜んでいたように見えた。
私たちは「生きているのか」、それとも「生かされているのか」。
自分の意志で「生きる」という事を選んでいるのか。
そんな事を私は彼女から問われたと感じた。
常に重力を感じながら生きてきた私たちにとって、その重みは気づきにくい。
しかし、本作を最後まで観れば改めて「生きる」という行為を選びたくなったのだ。
まとめ
- ストーリー 78点
- 音楽 80点
- 演出 85点
- 映像表現 90点
- 総合点 83点
91分とは思えないとんでもない満足感の映画!!
あなたの心を動かす傑作SF映画!!
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