映画好きなら言わずとしれた名作。
本作が面白いのはこの記事を見てくださっている方なら、重々承知されている事だろう。
ではなぜ面白いのか、テーマは何なのか、レッドが仮釈放されたの何故か?
本作が私たちに伝えたかったメッセージとは何か。
この記事では”面白い”のさらに先の視点や考え方を3つの要素で考察した。
※この記事にはネタバレが含まれます
結論
- テーマは「希望があたえるもの」
- レッドが仮釈放されたのは”犯した罪との向き合い方”が理解できたから
- 塀をつくるな、希望を持て
概要
1994年公開アメリカヒューマン映画
監督:フランク・ダラボン 原作:スティーブン・キング
主演:ティム・ロビンス、モーガン・フリーマン
テーマ「希望があたえるもの」
本作のテーマを一言で表すなら、「希望」が人にあたえる影響力を表現した映画である。
この「希望」とは何か。
劇中では音楽、趣味、教養、社会への復帰や家族といったもので例が出された。
私は最初に本作を観た時、主人公はアンディだと勘違いしていた。
なんせ一番最初に登場する人物である事に加えて、劇中では主に彼の行動を描写していたからだ。
しかし、再び鑑賞すると”ショーシャンクの空に”の主人公が、実は”レッド”である事が分かった。
本作では一貫してレッドの語りが入る。
内容としては刑務所内で起きた出来事の説明と、彼の心理描写だ。
”ショーシャンクの空に”のストーリーをレッド視点で要約すると以下のようになる。
長年刑務所で暮らし、希望を失ったレッドに、最後まで希望を持ち続けたアンディと出会い、
再び人生に希望を見出して歩みを進めるストーリーである。
このテーマをさらに詳しく説明するために、劇中の3人の人物に焦点を当てて解析する。
- レッド
- ブルックス
- 所長
この3人はいずれも、ある共通点がある。
それは皆、劇中で希望をあたえられていた人物という事。
だが、迎える結末は全く異なっていた。
アンディ「人間の心は石でできてるわけじゃない、心の中にはなにかある。君の心にも。」
レッド「一体何だ」
アンディ「希望だよ」
1994年映画”ショーシャンクの空に”
希望とは、人から人へ伝染し、不安と戦える唯一のもの。
時に人を勇気づけ、人間の心の糧となる。
アンディとレッドは希望を持ち続けたことで、人生を再び取り戻した。
ブルックスは希望の大切さに気づけず、不安に負けてしまった。
所長は希望が暴走し、破滅の道を辿った。
希望とは、強く、美しく、そして危険なもの。
なぜレッドは仮釈放されたか
本作最大の疑問であるレッドの仮釈放。
その謎を解くカギは、2つある。
- 3回目の仮釈放面接シーン
- アンディーの脱獄と彼との日々
①3回目の仮釈放面接シーン
面接官「終身刑で既に40年か。更生したと思うか?」
レッド「更生?更生ね……。」
「更生というのは、国が作った言葉だ」
「君たちに背広やタイや仕事をあたえるために」
「罪を犯して後悔してるか知りたいのか?」
面接官「後悔は?」
レッド「後悔しない日などない」
「罪を犯したその日からだ」
「あの当時の俺は、一人の命を奪ったバカな若造だった」
「彼と話したい。まともな話がしたい」
「今の気持ちとか。でもムリだ」
「彼はとうに死に、この老いぼれが残った。罪を背負って。」
「更生?全く意味のない言葉だ」
「不可の判を押せ。これは時間のムダだ」
「正直言って、仮釈放などどうでもいい」
1994年映画”ショーシャンクの空に”
仮釈放の条件は”罪に後悔をして、向き合えているか”をクリアしているかどうかだ。
レッドの1回目と2回目の仮釈放面接では、「更生しているか」と聞かれ「はい」と答えていた。
結果は”仮釈放 否認”。
つまり、更生しているかどうかは仮釈放の条件ではない。
更生しているか、ではなく犯した罪を後悔しているかを、確認している。
なぜ更生している、では結果は否認なのか。
実際に被害者側の立場になって考えてみる。
たとえば自身の大切な人が殺されてしまったとする。
私たちは加害者を、どう思うだろうか。
確実に好ましい感情は抱かない。
人によっては加害者を「殺してしまいたい」と思うかもしれない。
しかしそれは許されない。加害者も人間であり、生きる権利があるからだ。
そんな加害者に対して、「更生して、幸せに生きていてほしい」と思うだろうか。
私は違う。加害者が出所して、人並みの生活を手に入れても、その人が死ぬ瞬間まで「どうか自分の犯した罪を後悔していますように」と願う。
面接官はレッドの答えから、悲痛な後悔の思いを感じ取った。
だから仮釈放の許可が出たのだ。
更に言うと、この面接が行われたのは所長の死後。
刑務所内の体制が変化したのかもしれない。
1回目と2回目の面接では、面接官5名が対面でレッドと向き合っていた。
3回目の面接では、左端と右端の面接官がレッドに寄り添うように向きを中央へ向けているのだ。
②アンディーの脱獄と彼との日々
レッドにとって衝撃の出来事だったアンディの脱獄。
600年かかると本気で思われたロックハンマーで、20年ちかい間、ひたすら穴を掘り続けた。
”悪夢のような底なし沼”からの脱出。
レッドはアンディの脱獄をそう捉えた。
どんなひどい目に遭い、心を奪われようが、アンディの希望は誰にも奪えなかった。
その事実を脱獄の達成という形でレッドに証明したのだ。
アンディが刑務所に来たことでレッドたちの日々は確実に変化していた。
ビールを飲み、図書室がつくられ、音楽を美しいと感じられる心を取り戻していた。
「彼のいない日々は空虚だ」
レッドはアンディが去った刑務所をこう感じていた。
レッドにとっての希望(アンディ)が、刑務所から飛び出して、恐れていた社会へ羽ばたいた。
この時点で、彼にとって怖かった社会への復帰は”友と会える世界”へと変わった。
時折届く絵葉書を読んで、社会への恐怖ではなく、メキシコへ悠然と南下する友の姿を想像して微笑む。
アンディの脱獄と彼との日々が、レッドの人生を歩ませる希望の原点だった。
仮釈放が決まっても、ブルックスのようにならなかったのはこの希望があったからだ。
希望を持ち始めたレッドは後悔の念を面接官へ真摯に伝える。
面接官にレッドの思いが伝わり、仮釈放許可が出た。
”ショーシャンクの空に”が面白いのは一方的に希望を与え続けたアンディの物語ではないところだ。
囚人たちに希望をあたえたアンディもまた、囚人たちとのやり取りの中で希望をもらっていた。
彼が理不尽な暴力を受けて帰ってきた日には、レッドの励ましのメモがあった。
石が好きだというアンディに、仲間たちは大量の石を彼にプレゼントした。
さらに面白いことに、彼がレッドに最大の希望をあたえたきっかけとなった脱獄はレッドたちがいなければ、なし得なかったのだ。
20年間穴を掘り続けたロックハンマーも、それを隠していたポスターも、全てレッドと仲間たちが用意したものだった。
アンディの糧とする希望となっていた脱出経路の確保は、仲間たちの協力なしでは果たせなかった。
希望はあたえ、あたえられ伝染していく。
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